保有銘柄や気になる銘柄を中心に有価証券報告書の内容を確認して気になった点などをまとめます。
NTN(6472)の第119期の有価証券報告書が提出されました。
※記事に記載している数字について、特に記載がない限りは全て[百万円]です。
概要
世界シェア4位の軸受(ベアリング)メーカー。
海外従業員比率、海外売上高ともに60%を超えており、日本企業ではあるがグローバルに展開している。
事業の特徴・差別化・付加価値
中期経営計画「DRIVE NTN100」
「DRIVE NTN Transformation for New 100:新しい100年に向けた変革を加速する」と銘打ち、最新デジタル技術とこれまでNTNが培ってきた経営資源を融合させた事業構造の改変を推し進めるとしています。
この事業計画における具体的な動きとして、以下の点があげられます。
インホイールモーターの事業化
インホイールモーターは車のタイヤホイールにモーターを設置するものです。モーターが直接駆動部であるタイヤに設置されるため、高いエネルギー効率を実現できます。
スマートファクトリ
ボールベアリングの量産を計画している「和歌山製作所(仮称)」では、IoTやAIを活用した最適化、自動化、ロボット化の導入による省人化等を計画しているようです。
通信では5Gの実用化が秒読み段階となっており、無線通信による機械制御で工場内の配線が不要となり、工場内レイアウトの自由度が高まるという話もあります。このあたりの新技術をどのように活用できるか注目しています。
長期ビジョン
新しい100年に向けた10年後の長期ビジョンとして、売上高1兆円、営業利益率10%以上、総資産回転率1.0回以上、さらに為替変動による利益への影響を現状から半減させることを目指すとしています。
具体的な数値目標を立てているので、今後の事業成績と照らし合わせて予定通りに進んでいるかの指標になると思います。
不安要素
市場価格の低下
中国をはじめとした新興国製品の台頭により、軸受の一部では市場価格が低下しているようです。
軸受を主力製品としている企業としては、価格競争に巻き込まれないような対策が必要です。
特定業界への依存
軸受は世の中に必要とされている重要な部品とはいえ、軸受、特に自動車業界の軸受に依存している状況は今後の動向を注意してみておく必要があると考えています。
損益計算書
売上高、売上原価、粗利益、売上高純利益率
115期 | 116期 | 117期 | 118期 | 119期 | |
売上高 | 638,970 | 701,900 | 716,996 | 683,328 | 744,372 |
売上原価 | 525,935 | 570,197 | 576,650 | 555,722 | 603,612 |
粗利益 | 18% | 19% | 20% | 19% | 19% |
売上高純利益率 |
– | 3.4% | 2.3% | 0.7% | 3.0% |
粗利益、売上高純利益率ともに低い水準です。
商品に加えた付加価値を表す粗利益も20%以下の水準であることから、商品自体の価値がそこまで高くない可能性があります。
また、115期には純利益がマイナスとなっており、利益を出し続けられる体質という点に疑問を感じます。
このあたりの指標の動きを今後注意深く見ておく必要があると考えています。
貸借対照表
流動資産、棚卸資産
115期 | 116期 | 117期 | 118期 | 119期 | |
現金及び預金 | 85,746 | 69,094 | 63,233 | 80,001 | 88,683 |
棚卸資産 | 166,483 | 184,127 | 178,219 | 171,480 | 179,737 |
流動資産 | 467,746 | 460,975 | 422,289 | 434,925 | 460,099 |
流動負債 | 315,215 | 301,527 | 288,769 | 315,024 |
316,509 |
流動資産に占める棚卸資産の割合が大きい状態が続いています。また、現預金も低い水準が続いています。
このため、流動負債に対する支払い能力が不十分ではないかと疑ってしまいまいます。
自己資本比率 、ROE
115期 | 116期 | 117期 | 118期 | 119期 | |
自己資本比率 | 25% | 31% | 31% | 31% | 32% |
ROE | -7.3% | 9.1% | 6.5% | 1.8% |
8.3% |
自己資本比率は30%前後と高水準とは言えない数字です。それに加え、ROEも低水準で推移しています。
借入によるところが大きい割には、利益率を確保できていないと言えます。
まとめ
回転する軸を受けるための軸受は今や様々なところで使用されています。
様々な技術革新によって新しい技術や製品が生み出されていますが、その変化の中でも軸受は変わることなく必要とされてきました。
今のところ軸受に取って代わるような部品や技術は出てきておらず、今後も軸受は必要とされ続けると考えています。
そしてNTNは電気自動車の存在感が増す中でインホイールモーターシステムの事業化を進めているなど、今後の世の中の動きを見据えて事業展開を進めているように見えます。
しかし、自動車向け軸受の割合が高いことが気になるところです。また、損益計算書からみる商品としての価値、貸借対照表から見る財務状況についても不安を感じます。
製品自体は良いと思えるものの、決算書から見る状態としてはそこまで良い印象を受けません。
今後の推移を注視しながら、これからの投資をどうしていくか検討しようと考えています。
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