企業分析

企業分析 6999 KOA 第90期

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保有銘柄や気になる銘柄を中心に有価証券報告書の内容を確認して気になった点などをまとめます。

 

KOA(6999)の第90期の有価証券報告書が提出されました。

 

※記事に記載している数字について、特に記載がない限りは全て[百万円]です。

 

概要

KOAは抵抗器の世界トップメーカーです。

 

職と人がいなくなっていく地元を農工一体となった環境に生まれ変えたいという創業者の想いから、長野県の山間部(伊那市)に本社をもち、地元からの採用を積極展開しています。

 

JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」の抵抗器にKOAの製品が使用されていました。

 

事業の特徴・差別化・付加価値

5つのステークスフォルダ

顧客・取引先、株主、社員、地域社会に加え、地球をステークスフォルダとして捉えています。生命及び物質は有限という考え方、また人間もまた生態系の一員という考え方のもと、企業の在るべき姿を考え、行動するという考え方です。

 

ゼロディフェクト・フローの構築

桁違いの品質を求められる市場での競争優位性を確保するため、ゼロディフェクト・フローの構築を全グループの目標に掲げています。

 

ゼロディフェクトとは不良品ゼロということです。これはどこの企業でも目指すべき指標であり、同時に達成が困難でもあります。

 

KPS(KOA Profit System)

KOAは全員参加型の経営改善活動を長く続けていて、KPS(KOA Profit System)と呼んでいます。これはKOAのマインドでもある「無駄を最小限に抑えた循環型の活動」に繋がるものだと思います。

 

現在KPSは、第三ステージとして将来のイノベーションに向けて基盤技術をベースとした新たな価値を提案するビジネスモデルの創出に注力しているとあります。

 

つまり、会社は現在を将来に向けた投資段階と捉えていると言えます。

 

トリリオン・センサ社会

近年、様々な技術革新が進んでいます。その実現のためには多くのセンサが使用され、1兆個を超えるセンサが使用される「トリリオン・センサ社会」がすぐそこまで来ているというのがKOAの見る将来像です。そして、センサには高精度腹膜チップ抵抗器の需要拡大が予想されるというのがKOAの想定です。

 

不安要素

電子部品の製品価格が低下する傾向にある

事業を展開する市場において激しい競争にさらされており、電子部品の製品価格が低下する傾向にある。

 

KOAとしては高付加価値製品の提供に注力することで価格競争の流れに乗らないようにしようとしているようです。

 

商品の欠陥

「Quality 1st」を経営方針のひとつとして掲げ、「ゼロディフェクト・フローの構築」に向けた改善活動を進めているが、万一製品の欠陥により重大な問題が発生した場合、多額の損害賠償金の支払いや売り上げの減少等が実績んい影響を及ぼす可能性があると記載されています。

 

損益計算書

売上高、売上原価、粗利益、売上高純利益率

  88期 89期 90期
売上高 45,462 45,600 52,515
売上原価 32,140 31,492 34,879
粗利益 29% 31% 34%
売上高純利益率 4.4% 5.6% 8.3%

粗利益はあまり変化していないにもかかわらず、売上高に対する純利益率が大きく改善しています。何か変化が発生しているように見えます。

 

営業利益

  88期 89期 90期
営業利益 2,593 3,141 5,753

前期までとの実績比較で、営業利益が急激に伸びていることが確認できます。報告書を確認すると、この伸びは高付加価値製品の売上増加およびコストダウンの効果などによるものと記載があります。

 

売上高純利益率が急激に高い水準になっていましたが、これは営業利益の伸びが起因していると考えられます。商品の付加価値が向上すると、粗利益にも変化が発生してくるはずですので、数字の動きから推測すると、高付加価値製品の売上よりもコストダウンによる効果が大きく出たのではないかと予想できます。

 

今後もコストダウンの効果が今後も継続するのであれば企業価値の増加にも大きく貢献すると思います。

 

貸借対照表

棚卸資産

  88期 89期 90期
棚卸資産 4,852 5,048 5,873

棚卸資産も増えてきていますが、売上高の伸びに伴った伸びのように見えるので、現時点では気にかける必要はないと考えています。

 

自己資本比率、ROE

  88期 89期 90期
自己資本比率 80.3% 79.1% 78.1%
ROE 3.6% 4.5% 7.2%

徐々に落ちていますが、もともと高い水準のため、現時点では問題視するほどの水準ではないと考えています。

 

自己資本比率の減少に対するROEの増加率が高水準です。特に90期は大きな伸びを出しています。

 

自己資本はあまり減っていないにもかかわらず、利益率は大きく改善している。自己資本を効率的に利益に繋げていっているといえます。

 

キャッシュフロー計算書

投資活動によるキャッシュフロー

  88期 89期 90期
投資活動によるキャッシュフロー -3,532 -1,549 -4,691

投資活動によるキャッシュフローが大きくマイナスで出ています。報告書によると、これは有形固定資産の取得による変動と記載があります。

 

その他

配当性向

  88期 89期 90期
配当性向 64.4% 59.2% 29.9%

年ごとにばらつきはありますが、4年間で2回、配当性向が50%を超えています。無理をしているのか使い道が無いためなのか、少し気にかけてみてみる必要があると考えています。

 

まとめ

固定抵抗器の市場で世界トップメーカーであるKOA、財務状況についても良好な状態だと思います。

 

ただリスクにもあったように、抵抗器の市場は価格競争が激化しているとあります。その中でKOAは高付加価値な製品を世の中に出すことを選択しています。激しくなる競争の中でKOAがどのように動いていくか注視しています。

 

財務状況に対する分析結果だけではなく、KOAについては創業から続く企業理念を知ったうえで、応援したいと思った企業です。

 

農村というコミュニティが崩壊する中で、地元に仕事を作りたいという創業者の想いが今も脈々と受け継がれ、地域社会や地球との共生の道を模索するKOA。

 

一見、綺麗すぎる話のように思える企業理念ですが、応援したくなりました。

 

今後も状況を見ながら、株を追加購入していきたいと考えている企業です。

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