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【イオン(8267) 第94期】小売業で集めた顧客から小売業以外の方法で利益を得る

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2019年5月30日、イオン(8267)の第94期有価証券報告書が提出されました。

イオンモールなど、小売業のイメージが強そうなイオンですが、財務諸表の中身を見てみると違う一面が見えてきます。 

イオンの財務諸表を見ながらイオンの利益の源泉を探ってみようと思います。

※記事に記載している数字について、記載がないものは全て[百万円]です。 

 

セグメント別業績に見える利益創出のしくみ

以下はイオンのセグメント別売上収益と売上利益をグラフにしたものです。

「GMS事業」というのは「総合スーパー事業」を表します。イオンモールとかです。「SM事業」というのは「スーパーマーケット事業」です。

営業収益だけみると、GMS事業とSM事業が特出しています。やはり営業収益全体に対する小売業の割合が大きいことが一目で分かります。

ところが、セグメント別の営業利益の規模を見ると、GMS事業、SM事業に代わって「総合金融事業」や「ディベロッパー事業」が大きいことが分かります。

「総合金融事業」はイオン銀行やクレジットカードなどの金融業です。また「ディベロッパー事業」ですが、例えばイオンモールに行くと、モール内には家電のショップや衣服のショップが入っていますが、これらのショップから入ってくる賃料などが当たります。

営業収益と営業利益の状況から、イオンのビジネスモデルが見えてきます。

イオンにとってGMS事業やSM事業は利益を追求するための事業というよりも、集客や認知のための事業なのだと思います。

そして、集まってきたお客さんに銀行口座やクレジットカードを作っていただいただく(総合金融事業)。また、お客さんが集まるところであれば様々なショップが賃料を払って出店してくれる(ディベロッパー事業)。これがイオンのビジネスモデルなのだということが見えてきます。

 

貸借対照表はビジネスモデルを映し出す鏡

イオンのビジネスモデルを理解したところで、財務諸表の中身を見ていきます。

第94期の損益計算書で目に付くのは、利益率の低さです。約8.5兆円の営業収益に対して、営業利益は約2.1億円しか出せていません。約2.5%です。

小売業で集客し、金融事業やディベロッパー事業で利益を出す仕組みを作っているイオンですが、利益を出すのに苦戦しているのがうかがえます。

次に貸借対照表ですが、1年以内もしくは1営業サイクル内で支払いが必要となる流動負債が資本税体の約60%を占めています。

この実態を確認するため、流動負債にあがっている科目のうち、金額の大きなものから上位3位までをピックアップしてグラフにしました。

「銀行業における預金」が流動負債全体の約57%を占めています。イオン銀行などの金融業を展開し、そこから多くの利益をあげているイオンの貸借対照表には銀行業ならではの科目が表れてきています。このようなところにもイオンのビジネスモデルが表れてきていて面白いですね。

 

存在感を増す銀行業に伴い形を変えてきた財務諸表

損益計算書の中身を経年で比較してみると、売上自体は増加傾向にあることが分かります。しかし、それを思うように利益増加に繋げていけていないように見えます。

また貸借対照表を経年比較で見ると、総資産が増加していることが分かりますが、それと同じ割合で増加しているのは流動負債です。

流動負債に計上されている科目を見てみると、「銀行業における預金」が流動負債の増加に伴い増加していることが分かります。 

小売業で顧客を集め、金融業やディベロッパー事業で利益をあげようとしているイオンにとって、この推移は想定している状況なのではないかと考えます。

 

多様化するビジネスモデル

多くの人にとって、イオンは小売業に見えると思います。しかし、財務諸表の中身をよくよく見ると、小売業により集めた顧客から、金融業やディベロッパー事業を通じて利益を生み出すという別の一面が見えてきます。

各企業が生き残りをかけて様々な試みをする中、ビジネスモデルも変化していくこともあると思います。投資家はそのような変化も感じ取りながら、利益の創出と社会貢献を続けていける企業を探していく必要があるのだと思います。

 



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