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企業分析 9201 日本航空 第70期

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保有銘柄や気になる銘柄を中心に有価証券報告書の内容を確認して気になった点などをまとめます。

 

日本航空(9201)の第70期の有価証券報告書が提出されました。

 

※記事に記載している数字について、特に記載がない限りは全て[百万円]です。

 

概要

JALの愛称で知られる、国内第二位の航空会社です。

過去に一度、経営破綻を経験しています。

 

事業の特徴・差別化・付加価値

経営目標

2017~2020年度におけるJALグループ中期経営計画として、以下の3項目を掲げています。

 

安全

「輸送分野における安全のリーディングカンパニーとして安全の層を厚くし、安全運航を堅持する。」としています。

 

顧客満足

「2020年度までに世界トップレベルのお客様満足度を実現する」としています。

 

財務

「営業利益率10%以上、投資利益率(ROIC)9%以上」を目標としてあげています。

 

特に「安全」について、この業界の企業としては当然達成しなければならないものであり、未達成は許されない領域と言えます。

 

また、一度経営破綻を経験している企業です。財務情報の管理を含め同じ過ちを繰り返さない経営をするよう、内外からの厳しい目を向けられているはずです。

 

JALフィロソフィ

日本航空で働く職員の意識、価値観、考え方を教育するための指標といったもののようです。

 

職員一人一人が自分とJALについて向き合い、仕事に対するモチベーションをあげる原動力となっているものです。

 

経営を再建する際に築かれたJALフィロソフィは、今のJALにとっては非常に重要なもののはずです。

 

海外発の需要増加

2019年には大阪G20やラグビーワールドカップなどが開催されます。また2020年には東京オリンピックが開催されることから訪日外国人の増加が見込まれます。

 

目標に掲げる世界トップレベルのお客様満足度の実現が達成できるかどうかが大切になってきそうです。

 

スマート空港

顔認証を活用した搭乗手続きや、新型自動チェックイン機の増設、無人で手荷物を預けられるセルフバゲージドロップなど、搭乗手続きにかかる時間を短縮する投資を実行すると発表しています。

 

タイミングとしては2020年の東京オリンピックまでに羽田空港、成田空港への導入を目指すとしています。

 

これもお客様満足度の向上に繋がりそうな取り組みです。

 

不安要素

競争環境に関わるリスク

日本の航空会社といえば日本航空(JAL)と全日空(ANA)です。国内線においては、この2つの航空会社の存在がとても大きいといえます。

 

しかし、最近では格安航空(LCC)の存在感も増し、競争が激化してくると考えられます。

 

また移動という意味では、航空会社は鉄道(新幹線)とも競争する必要があります。鉄道ではリニアの誕生も秒読み段階となっています。

 

日本航空の周りには、これら数多くの競争相手が存在しており、状況の変化を注意してみておかなければならないと考えています。

 

航空安全に関わるリスク

飛行機は最も安全な乗り物と言われています。飛行機の事故で死亡する確率は、雷に打たれる確率より低いという報告があります。

 

しかし、確率は低いですがゼロにはなりません。ひとたび重大な事故が発生したら企業経営に影響が出ることは確実です。

 

上場廃止を経験

日本航空といえば2010年の上場廃止が記憶に新しいところです。企業体質が脆弱な状況の中で発生したリーマンショックをきっかけに、日本航空は経営破たんに追い込まれました。

 

これについては不安要素でもありますが、見方を変えれば、再発防止のための対応も進めているはずです。

 

単純に不安視せずに今後の動向を見て判断していけばよいかなと考えています。

 

財務分析

売上高、売上原価、粗利益、売上高純利益率

  66期 67期 68期 69期 70期
売上高 1,344,711 1,336,661 1,288,967 1,383,257 1,248,681
売上原価 986,723 931,902 926,936 993,635 927,405
粗利益 27% 30% 28% 28% 26%
売上高純利益率 11% 10% 13% 13% 11%

特筆すべきは売上高純利益率です。過去5年間、10%を超える水準が続いています。非常に高い水準であり、売り上げに対して優秀な純利益を継続して出せています。

 

自己資本比率、自己資本利益率(ROE)

  66期 67期 68期 69期 70期
自己資本比率 52.7% 53.4% 56.2% 57.2% 57.4%
ROE 20.32% 21.54% 18.09% 13.32% 13.55%

過去5年間、自己資本比率50%以上が続いています。さらに、下がってきてはいるものの、ROEも10%以上を継続しています。

 

ROEは自己でいかに効率的に稼げるかを表す数値です。多くの投資家が注目している数字であり、一般的に10%以上だとよいと言われています。

 

少ない自己資本で利益を出すために使いやすい方法として、借金をする方法があります。借金で得たお金を活用することで、それだけ儲けに繋がりやすくなります。この方法でROEを上げている場合、自己資本比率が下がることになります。

 

日本航空の場合は自己資本比率も高い水準にあることから、自己資本の枠内で効率的に利益を出せていると言えそうです。

 

流動資産、負債総額、航空機(固定資産)

  66期 67期 68期 69期 70期
流動資産 615,454 629,240 626,331 686,066 769,364
負債総額 672,595‬ 708,362‬ 725,377‬ 760,092‬ 893,853‬
航空機(固定資産) 491,295 560,601 671,387 704,134 682,399

流動資産(現金化しやすい資産)と負債総額(流動負債+固定負債)を並べてみると、常に負債の方が大きい状態です。

 

すぐに影響が出る状態では当然ありませんが、僕の投資判断において負債総額より流動資産の方が大きいことは確認するポイントなので、気になる状況です。

 

そして、各科目を見ていて気になった点が固定資産に計上されている「航空機」です。航空会社であれば当然航空機は必要になると分かっているつもりでしたが、貸借対照表上で改めて数字を確認すると、その額の大きさが非常に目立ちます。

 

その他

飲酒問題の再発防止

パイロットが搭乗前の飲酒検査で基準値を超えたアルコールが検出される事例が立て続けに起こっています。

 

命を預けている側(乗客)からしたら非常に不安になる事例です。

 

また、上記した「JALフィロソフィ」という職員の心構えがどの程度浸透しているのかに疑問を持ってしまいます。

 

まとめ

2010年に経営破綻した日本航空は2012年に再上場を果たしました。一度経営破綻しているという事実は、やはり不安を感じるポイントになってしまいます。

 

また、航空会社の業界はグローバルに展開する競業他社との競争の中で生き残っていく必要があるため、とても気を抜けない業界だと思います。



注意しておかなければならないところは多そうですが、財務状況を見ると、なかなか良い成績を出していると思います。

 

JALフィロソフィ、顧客満足度向上のための各種試みなどを展開していく中で、今後の動向に注目しています。

 

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