2019年6月27日、日産自動車(7201)の第120期の有価証券報告書が提出されました。
日産自動車といえば、日本を代表する自動車メーカーの一つです。最近ではEV車のCMなどもテレビで見られるなど、研究開発に力を入れていることがうかがえます。
その一方で、カルロス・ゴーン社長による不正行為の疑惑が浮上していることからも話題になっています。
今回はこの日産自動車の第120期有価証券報告書をもとに、その財務状況を見てみたいと思います。
※記事に記載している数字について、特に記載がない限りは全て[百万円]です。
巨額の売上原価のために伸びない利益
当期の損益計算書をみた時、真っ先に目に留まるのは売上原価が非常に大きいことです。
大きな売上原価に押され、売上総利益以下の利益は非常に小さいものになっています。また、この傾向は今期だけではなく、経年でみても同じ傾向が継続しているようです。
自動車は日産以外にも多くの大手メーカーがあり、その中で発生する価格競争が粗利益の低下を招いているのではないかと考えています。
増加する負債の陰
簡単に動かせない資産である固定資産を株主資本だけでは補えておらず、負債を使ってカバーしていることが分かります。
このように固定資産と株主資本の比較は財務分析のいて「固定比率」という指数で利用されるもので、一般的に株主資本は固定資産より大きいほうが健全といわれています。
キャッシュの流れから感じる日産の意識と苦悩
継続的な投資に感じる未来への意識
キャッシュフローについては投資による大きなキャッシュアウトが継続的に発生しています。
最終的なキャッシュの収支を表すネットキャッシュフローはプラスマイナス0付近をウロウロしているため、キャッシュの増減には大きな変化は無さそうです。
しかし、キャッシュフロー計算書の詳細をみたときに気になった科目がありました。
投資の陰に潜む負債
「長期借り入れによる収入」と「長期借り入れの返済による支出」のバランスです。
それぞれの科目の過去5期分比較を表にまとめました。
116期 | 117期 | 118期 | 119期 | 120期 | |
長期借入による収入 | 981,970 | 1,824,367 | 1,724,688 | 1,413,908 | 1,313,294 |
長期借入の返済による支出 | △1,094,942 | △1,545,177 | △1,369,795 | △1,463,828 | △1,344,303 |
毎年継続的に長期的な借り入れをしていることが分かります。
そしてさらに、長期借り入れと同じくらいの金額を毎年返済しているようです。
つまり、年間返済額と同じくらいの金額を毎年新たに借り入れていることになります。
変わろうとしている「車」の定義に立ち向かう日産
自動車業界は、今後大変革が予想されています。
日産自動車は「技術の日産」というスローガンを打ち出して電気自動車を積極的に展開するなど、変化に向けた動きを見せています。
このような環境において次の時代に生き残るには先行投資と、それに伴う負債の増加が発生することもあると思います。
しかし、先行投資の時期が長期間続くと財務状況が悪化してしまいます。
日産にとっていま、非常に重要かつ難しい経営判断が必要な時期に来ているのではないでしょうか。
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