企業分析

企業分析 6472 NTN 第120期

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2019年6月28日、NTN(6472)の第120期の有価証券報告書が提出されました。

 

NTNは軸受け(ベアリング)の大手メーカーです。

前期も分析をした企業です。

企業分析 6472 NTN 第119期

 

今や軸受けは様々な箇所に利用されている重要な部品であり、今後においても引き続き重要な部品として利用され続けるであろうと思われます。


その軸受けメーカーの中でもNTNは、世界シェア4位を誇ります。

 

様々なところで活用される重要部品の世界シェア4位メーカーであるNTNですが、最近の財務諸表を見てみると、法令・規則や提起に関する損失や固定資産の減損損失などに伴う利益縮小や、借入金の増加など、今後の動向を予想するうえで懸念すべき点が見えてきました。


※記事に記載している数字について、記載がないものは全て[百万円]です。

 

財務分析(Financial analysis)

損益計算書(PL)

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
売上高
(Sales)
683,328
(100%)
744,372
(100%)
733,569
(100%)
売上原価
(Cost of goods sold)
555,722
(81.3%)
603,612
(81.1%)
603,082
(82.2%)
売上総利益
(Gross profit)
127,606
(18.7%)
140,760
(18.9%)
130,487
(17.8%)
販管費
(Selling)
91,984
(13.5%)
101,151
(13.6%)
103,541
(14.1%)
営業利益
(Operating income)
35,622
(5.2%)
39,609
(5.3%)
26,946
(3.7%)
経常利益
(Ordinary profit)
29,605
(4.3%)
31,250
(4.2%)
22,231
(3.0%)
税引き前当期純利益
(Profit before tax)
14,891
(2.2%)
26,906
(3.6%)
2,940
(0.4%)
当期純利益
(Net income)
2,830
(0.4%)
22,289
(3.0%)
△6,958
(-)

※()内は売上高に対する各指標の割合です。

 

まず目に付くのは今期の当期純利益がマイナス、つまり赤字となっていることです。

この理由について確認してみると、採算が低下した国内生産設備を減損損失として計上したことが大きな要因のようです。


保有している生産設備から生産される製品について、競合他社の参入や新製品の販売などで価値が下がると、その生産設備の価値も下がることになります。または生産設備自体の利用用途に変更が生じることで生産設備の稼働率が低下することもあります。


このような場合、資産の評価額を再評価することで発生する損失が現存損失です。

 

そして現存損失を計上したことで貸借対照表上の資産評価額が調整されるとともに、損益計算書上では特別損失として損失額が計上されます。このため、今期は最終的に赤字となっています。

 

NTNの方針としては、国内生産設備に現存損失を計上し、今後はインド、東南アジアなどの海外へ投資を集中する方針のようです。

 

今後の方針をはっきりさせたうえで、その方針に沿わない部分の損失を確定してしまうという動きについて、僕としては将来志向の方針転換ととらえます。

 

ただ、NTNの場合は他の数字も気になります。

 

前期までは利益を出しており、経常利益まではおおむね同じような水準で推移しています。


しかし、ここのところは法令・規則や提起に関する損失や現存損失などで利益水準が低い状況の年がでてきており、純利益の推移をみると不安定な状況です。

 

貸借対照表(BS)

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
流動比率
(Current ratio)
138.1% 145.4% 157.2%
当座比率
(Acid-test ratio)
70.6% 75.2% 78.9%
自己資本比率
(Capital adequacy ratio)
28.7% 30.2% 27.4%

流動資産だけ見ると、140%程度以上となっていることから、そこまで不安になるような水準ではありませんが、当座比率でみると低い水準です。

 

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
現金及び預金
(Cash and deposits)
80,001 88,683 90,243
受取手形及び売掛金
(Notes and accounts receivable)
136,847 143,692 128,805
電子記録債権
(Electronic record receivables)
5,494 5,744 9,505
商品及び製品
(Products and products)
97,405 96,468 102,676
仕掛品
(Work in process)
43,629 49,478 55,419
原材料及び貯蔵品
(Raw materials and supplies)
30,446 33,791 36,409

これは流動資産の科目を並べたものです。

 

流動資産の中でも当座比率の算出には使われない「商品及び製品」、「仕掛品」、「原材料及び貯蔵品」の額が大きいことが分かります。


これらは売上にも計上されていない、いわば在庫や材料に該当するもので、すぐに現金化できるものではありません。


在庫に関しては売れなかったら売上にも計上されなくなってしまいますので、これらの金額が大きい状況に見えます。

 

さらに、当座比率における「当座資産」は「現金及び預金」と「受け取り手形及び売掛金」、「電子記録債権」の合計ですが、これら当座資産を構成する科目の中で、「受取手形及び売掛金」の金額が特に大きいことが分かります。


「受取手形及び売掛金」はいわば「ツケ払い」をされている状況と言え、現金回収が済んでいません。


このため、「現金回収できなくなるリスク」を抱えている状況といえ、当座比率の質という面ではよくないと思います。

 

キャッシュフロー計算書(CS)

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
営業活動によるキャッシュフロー
(Cash flows from operating activities)
62,387 61,799 43,224
投資活動によるキャッシュフロー
(Cash flows from investing activities)
△41,218 △48,358 △65,614
財務活動によるキャッシュフロー
(Cash flows from financing activities)
△8,218 △7,520 20,745

今期、キャッシュフロー計算書の金額に大きな変化が発生しています。


投資活動によるキャッシュフローの支出を賄うように財務活動による収入が発生しています。

 

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
短期借入金の純増減額(△は減少)
(Net change in short-term borrowings)
13,679 △10,030 13,642
長期借入れによる収入
(Proceeds from long-term borrowing)
39,480 68,998 74,297
長期借入金の返済による支出
(Repayment of long-term debt)
△75,060 △68,858 △58,359
社債の発行による収入
(Proceeds from issuance of bonds)
20,000 10,000

これは財務活動によるキャッシュフローに計上される科目を取り上げたものです。過去3期において、多額の長期借り入れをしていることが分かります。


特に長期借入金の返済額は、その期の営業活動によるキャッシュフローの額より大きなものになっています。

 

混合指標(Mixed indicator)

  118期
(2016年度)
119期
(2017年度)
120期
(2018年度)
ROE 1.2% 8.4% -2.9%
売上債権回転率
(Accounts receivable turnover)
4.8 5.0 5.3
棚卸資産回転率
(Inventory turnover)
4.0 4.1 3.8

「ROE」については大きく変動する形で推移しています。


「ROE」は当期純利益をもとに算出している指標のため、損益計算書で記載した特別損失による利益減少の影響を大きく受けているものと思います。

 

「売上債権回転率」や「棚卸資産回転率」の数字が変動するということは、売掛金や在庫・原材料として計上された金額の割合が変動しているといえるため、商売における何かしらの変動が起きていると考えることができます。


これらの数字には目立った変化はなさそうです。

 

まとめ

損益計算書にも記載しましたが、前期までの法令・規則や提起に関する損失と今期の現存損失など、特別損失により最終的に利益が低い、もしくはマイナスに転落しているといった状況です。

 

もともと軸受は様々な分野で必要不可欠な部品であるとともに、NTNのインホイールモーターや航空宇宙分野など、将来的にも期待できると考えていました。

 

経常利益までの利益はおおむね同じような水準で出ているため、最近の業績不振は一時的なものととらえることもできると思います。

 

しかし、キャッシュフロー計算書を見ると長期借入金の返済による支出で大きな額が計上されており、借入返済の負担が大きい印象を受けます。


不景気等の売上現象などが発生すると、厳しい状況になってしまう可能性もあるとみています。

 

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