保有銘柄や気になる銘柄を中心に有価証券報告書の内容を確認して気になった点などをまとめます。
2019年6月28日、レオパレス21(8848)の第46期の有価証券報告書が提出されました。
施工不備問題で話題になっていますが、財務諸表に載っている数字から現状を見てみたいと思います。
※記事に記載している数字について、特に記載がない限りは全て[百万円]です。
財務分析(Financial analysis)
損益計算書(PL)
44期 (2016年度) |
45期 (2017年度) |
46期 (2018年度) |
|
売上高 (Sales) |
520,487 (100%) |
530,839 (100%) |
505,222 (100%) |
売上原価 (Cost of goods sold) |
427,819 (82.2%) |
434,761 (81.9%) |
428,987 (84.9%) |
売上総利益 (Gross profit) |
92,668 (17.8%) |
96,078 (18.1%) |
76,235 (15.1%) |
販管費 (Selling) |
69,766 (13.4%) |
73,142 (13.8%) |
68,839 (13.6%) |
営業利益 (Operating income) |
22,902 (4.4%) |
22,936 (4.3%) |
7,396 (1.5%) |
経常利益 (Ordinary profit) |
22,337 (4.3%) |
22,362 (4.2%) |
7,068 (1.4%) |
当期純利益 (Net income) |
20,394 (3.9%) |
14,823 (2.8%) |
△68,714 (-) |
※()内は売上高に対する各指標の割合です。
46期は大幅な赤字となっているのが分かりますが、特に目に付くのが、経常利益から当期純利益までの間の利益の大きな落ち込みです。
損益計算書の中身を見てみると、この落ち込みは特別損失に計上されている「補修工事関連損失引当金繰入額」や「空室損失引当金繰入額」など、今回の施工不備問題が起因する損失が大きな影響を与えていることが分かります。
特に大きな金額が計上されている「補修工事関連損失引当金繰入額」ですが、有価証券報告書の注記事項として、「補修工事関連損失引当金繰入額」について以下の記載があります。
ただし、全棟調査は進行中であることから、今後、補修工事関連損失引当金算定に係る前提条件に変更が生じた場合には、追加で発生する補修工事費用及び付帯費用等の金額が既引当額を超過する可能性があります。
したがって、翌連結会計年度以降の調査及び補修工事の進捗状況等によっては、追加で補修工事関連損失引当金を計上すること等により、当社グループの連結業績に影響が生じる可能性があります。
今後も「補修工事関連損失引当金繰入額」が計上される可能性がありそうです。
貸借対照表(BS)
44期 (2016年度) |
45期 (2017年度) |
46期 (2018年度) |
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流動比率 | 137.2% | 129.9% | 78.1% |
当座比率 | 113.9% | 114.4% | 65.4% |
自己資本比率 | 47.0% | 47.2% | 27.7% |
46期は流動比率、当座比率ともに100%を大きく割り込んでおり、財務状況としてみると不安を感じてしまいます。
44期 (2016年度) |
45期 (2017年度) |
46期 (2018年度) |
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利益剰余金 (Retained earnings) |
39,923 | 37,839 | △38,635 |
利益剰余金がマイナスとなっています。これまで積み上げてきた利益を食いつぶしてしまっている状況です。
キャッシュフロー計算書(CS)
44期 (2016年度) |
45期 (2017年度) |
46期 (2018年度) |
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営業活動によるキャッシュフロー (Cash flows from operating activities) |
27,504 | 27,338 | △7,212 |
投資活動によるキャッシュフロー (Cash flows from investing activities) |
△8,653 | △2,336 | 7,379 |
財務活動によるキャッシュフロー (Cash flows from financing activities) |
△14,048 | △13,354 | △15,181 |
キャッシュフローからも46期の大きな変化が明らかです。本業からの利益を上げることができておらず、大幅なキャッシュアウトが発生していて、今後の資金繰りに不安を感じます。
混合指標(Mixed indicator)
44期 (2016年度) |
45期 (2017年度) |
46期 (2018年度) |
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ROE | 13.4% | 9.3% | △57.2% |
ROEについて、前期までを見るとしっかりと利益を出している状況が見て取れ、これだけ見ると継続してしっかりとした利益を出し続けてきた実績を確認できます。しかし、施工不備問題が発覚した今期を見ると一気に大幅なマイナスとなってしまっています。
一度の問題発覚で、これほどまでに大きな変化が発生してしまうんだということを実感するとともに、有価証券投資の「リスク」という面を見た気がします。
まとめ
施工不備問題が発覚したレオパレス21。
こちろん、レオパレス21は倒産したわけではなく、これから復活していく可能性も十分にありますが、今回のレオパレスの決算は、去年まで順調に利益を出し続けてきた企業が突如として赤字企業に変わってしまう実例を示した形となりました。
今回の事例は株式投資に潜むリスクを実感するとともに、その世界に身を置く者の一人として、身の引き締まる思いです。